ホテルに宿泊する目的や顧客ニーズの多様化など、ホテルの経営環境は目まぐるしく変化しています。
例えば、団体旅行や長距離の移動は倦厭され、オンライン会議が主流になったことでビジネス客は減少。
インバウンド需要に関しても、ワクチン接種率の向上により回復が期待されるものの、コロナ禍前の状況に戻るまでには、もう少し時間がかかりそうです。
しかしその一方で、テレワークに代表されるようなライフスタイルの変化や、長引く自粛モードへの反動、また、安全に非日常空間を楽しみたい個人旅行者たちの動向が注目されています。
このような「ニューノーマル」に対応するために、ホテルは、新たな顧客層に向けて戦略的なターゲットマーケティングを行っていかなければなりません。
そこでこの記事では、中小規模ホテルのターゲット層となり得る新たな観光スタイルの例や、よりパーソナライズされたマーケティング施策のヒントを紹介していきます。
ホテル業界で注目される新たな観光スタイルには、次のようなものがあります。
あなたのホテル・旅館の特徴や強みを活かせるものがないか、検討してみましょう。
では、それぞれの観光スタイルの特徴を説明していきますね。
中小規模ホテルが注目するべき新たな観光スタイルの1つ目の例は、ワーケーションです。
ワーケーションとは、ワーク(仕事)とバケーション(休暇)を組み合わせた造語で、自宅や職場から離れた場所で、観光やリゾートを楽しみながら仕事をすることを意味します。
ワーケーション需要の高まりは、コロナ禍でテレワークを導入する企業が増えたことが大きなきっかけといえるでしょう。
株式会社ガイアックスの調査によると、リモートワークが可能な人のうち、47.8%が仕事メインのワーケーションを希望しており、単身で、平日に行きたいという回答がもっとも多くなっています。
逆に、休暇メインのワーケーションでは、家族と一緒に行きたいという回答が、単身で行きたいという回答を上回っています。
連休や学校の長期休暇など、「子どもを旅行に連れていきたいけど、なかなか休暇が取れない」といった家族連れ客も、ペルソナのひとつに加えてみてはいかがでしょうか?
エクスペディアの「ワーケーション」に関する調査では、20代の30%近くがワーケーションの経験がある、20代・30代の半数近くが、ワーケーションをしたいと回答しており、若い年齢層ほど、ワーケーションへの関心が高い傾向が伺えます。
ただし、若い年齢層からほかの年代に、ワーケーションの認知度が広まっていく可能性も考慮しておきましょう。
「ワーケーション宿泊客を獲得する5ステップ」の記事ではより詳細にワーケーション顧客の獲得方法をご紹介しています。
中小規模ホテルが注目するべき新たな観光スタイルの2つ目の例は、ステイケーションです。
ステイケーションとは、ステイ(滞在)とバケーション(休暇)を組み合わせた造語で、飛行機や新幹線に乗らず、近場のホテルなどで非日常を楽しむことを意味します。
という、現在の旅行者たちの感情を強く反映しています。
韓国のトレンド「ホカンス」も、ステイケーション需要に一役買っているといえます。
ホカンスとは、ホテルとバカンスの造語で、都会に住むの若い世代の女性が、近場の高級ホテルに宿泊して優雅な時間を過ごすこと。
ホテルニューオータニなど、このトレンドを察知した日本国内の高級ホテルのなかには、本来であればターゲット顧客層から外れるZ世代に向けた宿泊プランを販売し、集客に成功した例もあります。
ステイケーションプランで集客するためには、お客様にホテルから出ることなく、非日常空間を楽しんでいただための工夫が必要です。
例えば、NetflixなどのVOD(ビデオオンデマンド付きプランや、ホテルのコースディナーを客室でいただけるサービス、宿泊者向けのイベントなどのマーケティング施策を考えてみましょう。
中小規模ホテルが注目するべき新たな観光スタイルの3つ目の例は、サステナブルツーリズムです。
サステナブルツーリズムとは、観光地本来の姿や資源を持続的に保てるように配慮した「持続可能な観光」を意味します。
Booking.comの「サステイナブルな旅行への需要の高まりに関する調査結果」でも、8割以上が、サステナブルな旅行を優先したいと回答しており、ミレニアル世代・Z世代をはじめとする若い顧客層を集客するためには、「サステナビリティ」が重要なポイントになることは間違いないでしょう。
サステナブルツーリズムの重要性や、サステナブルなホテル経営のアイディアについては、こちらの記事で詳しくまとめています。
中小規模ホテルが注目するべき新たな観光スタイルの4つ目の例は、体験型ツーリズムです。
もともと体験型ツーリズムは、「ニューツーリズム」とも呼ばれ、訪日外国人をターゲットにしたマーケティング施策として注目されていました。
しかし最近では、サステナブルかつ、ステイケーションのコンセプトにぴったりなことから、国内旅行での需要が高まり、地域活性化の鍵になるとまでいわれています。
伝統工芸の体験型ツーリズムの例としては、ザ ロイヤルパークホテル 京都梅小路の着物の意匠と京友禅の技術を体験できる染め物ワークショップ付き宿泊プランや、ホテルインターゲート京都 四条新町のお抹茶体験、和蝋燭の絵付け体験などの伝統クラフト体験など。
また、農作物の収穫体験を提供するホテルも人気を集めており、星野リゾートリゾナーレ那須のように、本格的な農業体験をコンセプトにしたホテルも登場しています。
リゾナーレ那須の宿泊プランを見ると、サステナビリティへの関心が高いミレニアル世代の女性や、小学生くらいのお子さん連れの家族をターゲットにしたものがメインのようです。
中小規模ホテルが注目するべき新たな観光スタイルの5つ目の例は、アドベンチャーツーリズムです。
日本アドベンチャーツーリズム協議会によると、アドベンチャーツーリズムとは、
”アドベンチャーツーリズム(以下、AT)とは「アクティビティ、自然、文化体験の3要素のうち、2つ以上で構成される旅行」をいいます(Adventure Travel Trade Associationによる定義)。
旅行者が地域独自の自然や地域のありのまま文化を、地域の方々とともに体験し、旅行者自身の自己変革・成長の実現を目的とする旅行形態”
(引用元:日本アドベンチャーツーリズム協議会)
を指します。
アドベンチャーといっても、例えばロッククライミングような本格的なアクティビティである必要は全くなく、実際には、地域の文化や自然、地元の人々との交流がメインの旅行です。
ジャパンコンシェルジュが発表した、2021年夏休みの国内旅行最新動向調査結果でも、移動手段は車がメイン、目的地は自然が多い場所を選ぶ傾向が見られます。
3密を回避できるアドベンチャーツーリズムへのニーズは、これからも高まっていくでしょう。
また、インバウンド需要の落ち込みにより、もっとも大きな打撃を受けたといわれる北海道は、阿寒湖の森ナイトウォークKAMUY LUMINAや、アイヌ文化体験などのアクティビティなど、いちはやくアドベンチャーツーリズムに取り組みに着手。
業界最大の国際イベント「アドベンチャートラベルワールドサミット 2021北海道」の誘致にも成功しています。
中小規模ホテルが注目するべき新たな観光スタイルの6つ目の例は、サイクルツーリズムです。
サイクルツーリズムとは、自転車を旅の移動手段として使い、観光とサイクリングを同時に楽しむというもの。
2021年5月に閣議決定された第2次自転車活用推進計画でも、その4つの目標のひとつとして、「サイクルツーリズムの推進による観光立国の実現」が掲げられているほど、今、大注目の観光スタイルです。
自転車は、環境への優しさや交通混雑の緩和、現地の人々との交流といった、サステナブルな面を持つだけでなく、ほかの移動手段と比べて時間がかかることから、旅先での経済効果アップも期待できます。
さらに、海外ではサイクリング人気が非常に高いため、サイクリストにやさしい宿泊施設を目指すことは、インバウンド需要回復後の集客にも役立つでしょう。
最近では、サイクリストをターゲットにしたマーケティング施策を実施するホテルが増え、市町村による「サイクリストにやさしい宿」リストも作成されています。
参考までに、茨城県のサイクリストにやさしい宿の認定条件は下記の通りです。
自転車と一緒に宿泊できて、ポンプなどのメンテナンス工具の貸出しがあることが、大きなポイントのようですね。
中小規模ホテルが注目するべき新たな観光スタイルの7つ目の例は、ウェルネスツーリズムです。
ウェルネスツーリズムとは、心と体の健康増進やリフレッシュ、自己開発などを目的とした旅を意味します。
株式会社グローバルインフォメーションの市場調査レポート「ヘルス&ウェルネスの世界市場:業界動向、市場シェア・規模・成長率・機会および予測(2021年~2026年)」では、ヘルス&ウェルネス市場は、2026年には42億4,000万米ドルの規模に達すると予測。
市場の成長要因のひとつとして、ウェルネスツーリズムの急速な成長が挙げられています。
コロナ疲れのリフレッシュを目的にしたウェルネスツーリズムの客層に向けて、温泉やサウナ、スパなどの施設を活用したマーケティング施策や、ヨガ教室等のイベント開催を考えてみましょう。
中小規模ホテルのこれからのマーケティングターゲットとなり得る、新たな観光スタイルのイメージが掴めたところで、次に大切になるのがパーソナライゼーションです。
顧客のニーズやホテルに宿泊する目的が多様化しているため、従来のようなマスマーケティングでは、顧客の心を掴むことはできません。
ターゲット層を絞った集客プランを考え、ターゲット層となるセグメントに対してパーソナライズされたEメールでアプローチをしましょう。
まずは、新たな観光スタイルを楽しむ顧客の心を掴むために、よりターゲットを絞ったホテルの集客プランの事例をいくつかご紹介します。
つづいては、パーソナライズされたEメールキャンペーンです。
パーソナライズされたマーケティングを行うためには、CRMのセグメント機能を活用するのが効率的です。
ターゲットとなる顧客層の年齢や性別、リピーターかどうかといった基準で顧客リストをフィルタリングし、ピンポイントでキャンペーンを仕掛けていきましょう。
ホテルシステムWASIMILのCRMには、25以上ものフィルタリング基準が備わっており、性別や年齢といった一般的な基準だけでなく、誕生日月や宿泊回数、最終滞在月、居住エリア(国、都道府県)など、顧客リストを細かくセグメント化することができます。
さらに、マージタグで簡単にパーソナライズされたEメールが作成できるので、特別感の高いEメールマーケティングが実現可能です。
より特別感が演出できるホテルのマーケティングツールとして、クーポンを活用しましょう。
クーポンをホテルマーケティングに使うメリットには、次のようなものがあります。
新たな観光スタイルを楽しむ顧客に向けて、下記のようなクーポンを発行することもできます。
ホテルシステムWASIMILには、クーポンを発行し、管理する機能も備わっています。
クーポンの発行は、予約サイト上だけでなく、電話口やウォークイン時でもOK。
有効期限から、有効な曜日の限定まで、マーケティング戦略に応じてカスタマイズすることが可能です。
また、PMSと連携しているため、会計時にクーポンの適応忘れといった、人的ミスの心配もありません。
もちろん、クーポンの在庫数や発行数も、一元管理できます。
クーポンを活用してホテルの収益アップを図る方法について詳しくは、こちらの記事をどうぞ。
今回は、中小規模ホテルが、多様化する顧客のニーズや観光スタイルに対応したマーケティング施策を行うためのヒントをお伝えしてきました。
最近では、「リベンジ消費」というキーワードも登場。CCCマーケティング株式会社のアンケート調査では、ワクチン接種後に最もやりたいことの1位は国内旅行という、ホテル業界にとって明るい結果になっています。
新たな顧客のニーズを理解し、あなたのホテル・旅館の強みを活かせる集客プランはないかを検討し、パーソナライゼーションで顧客の心に響くマーケティングアプローチをしていきましょう。