あなたのホテルでは、どのくらいOTAに依存していますか?
直接予約を増やして、ホテルの利益率を上げたいと思いませんか?
直販率の向上は、OTA手数料の節約になり、そのまま利益率のアップにつなががります。
とはいえ、OTAに掲載することは、ホテルにとってデメリットばかりとは限りません。
そこでこの記事では、OTAのメリット・デメリットとあわせて、ホテルが直販率を50%に上げるための方法を解説していきます。
直接予約を増やすことで利益率も向上します
OTAとは?
OTA(online travel agent)とは、インターネット上で顧客に代わり、宿泊施設の予約や航空券の購入を代理で行ってくれるオンライン旅行代理店のことを指します。
楽天トラベル、じゃらん、一休.com、Yahoo!トラベルなどが国内の代表的なOTAの例です。
また最近では、Booking.com、Expedia、 Hotels.com、Agodaといった、海外の大手OTAも積極的に日本に進出しています。
OTA経由の予約が占める割合
日本旅館協会が行った経営状況等統計調査によると、ホテルのOTA経由の予約は全体の38.4%で、もっとも大きな割合を占めています。
ホテルの予約経路の割合
- OTA経由…38.4%
- 旅行代理店経由…22.2%
- 自社サイト経由…9.9%
- 電話やメールなどの直接予約…29.5%
しかしパンデミック禍でOTAのシェアが縮小し、直販率が増加するという動向が、ヨーロッパや(中国を除く)アジアの地域で見られるようになりました。
日本でも、GoToキャンペーンをきっかけに、公式サイトからの直接予約に注目が集まっています。
この流れが、直販で利益率を伸ばしたいホテルにとっての追い風になるかもしれません。
ホテルがOTAに支払う手数料
OTA経由で顧客があなたのホテルを予約すると、ホテルはOTAに手数料を支払う仕組みになっています。
ここで気になるのが、どれくらいの手数料がかかるのかということですよね。
実際の手数料は契約内容などにより異なりますが、代表的なOTAの送客手数料(システム使用料)の目安は下記のようになっています。
OTA送客手数料楽天トラベル
- 1名利用…7%
- 2名以上…8.25%
- インバウンド…+2%
じゃらんnet
- 1名利用…6%
- 2名以上…8%
- インバウンド…10%
一休.com10%るるぶトラベル1名利用…8%
2名以上…10%Expedia15%Booking.com12%
一般的な送客手数料は、6%〜15%。国内OTAの手数料は、海外のOTAと比べて安いようにも見えますよね。
しかし国内OTAには、送客手数料のほかにも、つぎのような手数料がプラスされるので注意が必要です。
- ポイント付与費:1〜2%
- オンライン決済手数料:2%〜
- アフィリエイト手数料:1%
OTA手数料の例
では具体的に、OTA経由での宿泊予約にどれくらいの手数料が発生するのか、例を見てみましょう。
わかりやすいように、2名利用で宿泊費10,000円(税込)。じゃらんnetからの予約という設定で計算してみます。
宿泊料金(税込):10,000円
送客手数料(8%):800円
ポイント付与(2%):200円
オンライン決済手数料(2%):200円
_________________________________
合計手数料:1,200円
このように、宿泊料金の1割以上が手数料として差し引かれてしまいます。
単純計算ですが、例えば、1日10件の予約をOTAから直接予約に変えることができたら、予約数を増やすことなく1日に12,000円の増益。
1年なら、438万円の増益となります。
とくに、部屋数が限られている中小規模のホテルの場合、直販率の向上は、 ホテルの収益アップに欠かせない戦略といえるでしょう。
ホテルがOTAを使うメリット・デメリット
データに基づき改善を繰り返しましょう
OTAには手数料というデメリットがあるのは確かですが、ホテルがOTAサイトに掲載することにより得られるメリットもあります。
メリットデメリット
- 認知度が上昇する
- リスティング広告が顧客の目に止まりやすい
- 販売チャネルを多様化できる
- インバウンド集客に効果的
- 直接予約が促進される(ビルボード効果)
- OTA手数料が高い
- リピーターを獲得しにくい
メリット
OTAの最大メリットは認知度の上昇です。
さらに通常の検索に加え、OTAは検索連動型広告(リスティング広告)を出している場合が多いので、公式サイトよりもユーザーの目に留まりやすくなります。
また、Booking.comやExpediaのような、海外で広く使われているOTAに掲載することで、インバウンド客に見つけてもらえるというのもメリットでしょう。
ビルボード効果(Billboard Effect)とは
OTA掲載のメリットのひとつに、ビルボード効果(Billboard Effect)があります。
ビルボード効果とは、OTAにホテルの情報を掲載した後に、公式サイトからの直接予約が増加する現象です。
なぜこのような現象が起こるのかというと、OTAに掲載されているホテルを見つけた見込み顧客が、そのホテルの公式サイトにアクセスして直接予約をするからです。
コーネル大学の2008年、2009年、2010年の3年間に及ぶ実験では、下記のような結果が報告されています。
- Expedia.comに掲載されているホテルの直接予約数が、非掲載の場合と比べて、9%から26%に増加
- 大手ホテルブランドで予約をしたユーザーの約75%が、ホテルに直接予約する前にOTAを利用
また、2017年のコーネル大学ジョンソン経営大学院によるレポート「The Billboard Effect: Still Alive and Well」でも、オンラインでホテルを直接予約した消費者の65%が、予約前にOTAサイトを訪れていたという実験結果が出ており、今でもビルボード効果が有効であることがわかります。
デメリット
OTAのデメリットは、なんといっても予約成立時に発生する手数料の高さです。
そのため、OTA経由の予約が増えるほど、ホテルの利益率が減少していくことになります。
そしてもうひとつのデメリットは、リピーターの育成がしにくいという点です。
通常、OTA経由の予約は、顧客とのダイレクトなコミュニケーションを確立することができません。
一方、公式サイトからの直接予約であれば、予約時にいただいたメールアドレスを使って、次回の予約につなげるためのマーケティング施策が可能になります。
直接予約を増やしてホテルの利益率を上げる方法
ホテルの利益率を上げるためには、公式サイトや電話予約などの、OTAを介さない直接予約を増やすことが有効です。
直接予約を増やせば、OTAに支払う手数料を節約ができ、リピーターの獲得にもつながります。
そのためには、カスタマージャーニー全体をお客様の目線で見直すことが大切です。
例えば、ホテルにおけるカスタマージャーニーは、以下のようになります。
ホテルをインターネットや雑誌などで認知し興味を持つ
↓
公式サイトやOTAなどを経由してホテルを予約する
↓
ホテルにチェックインする
↓
ホテルでサービスを受けて満足・感動する
↓
チェックアウトする
↓
ホテルの満足度やサービスの質を評価する
↓
再び予約する
では具体的に、どのような施策が効果的なのでしょうか?
ここでは、顧客体験を向上させて、直販率を50%に上げるための6つの施策をご紹介していきます。
1.顧客が使いやすい公式サイトを作る
ホテルの直販率を50%に上げるための1つめの施策は、顧客目線で、使いやすい公式サイトを作ることです。
オンライン予約の顧客体験は、オンライン上に表示されたホテル情報が、顧客の目に留まることから始まります。
Hotels.comの調査でも、顧客はホテルを予約する際、ホテルの料金や口コミのほかに、予約サイトやアプリの使いやすさを重視するという結果が出ています。
特に最近では、スマートフォンユーザーが増加しています。
JTB総合研究所が実施した「スマートフォンの利用と旅行消費に関する調査(2019)」によると、スマートフォンでの旅行関連商品の購入が過半数を超えているとのこと。
直接予約をしてもらうためには、公式サイトのデザインや内容が簡略で、どの端末からも使いやすいものであることが重要だといえるでしょう。
自社宿泊予約システムの導入
公式サイトからの直接予約を促進するためには、予約システムをウェブサイトに組み込む必要があります。
ユーザーにとって予約システムは、公式サイトの一部です。
顧客体験を最適化するために、下記のようなポイントをおさえた予約システムを選びましょう。
- シンプルで使いやすいこと
- スマートフォンの画面に対応していること(レスポンシブデザイン)
- ホテルのイメージや公式サイトのデザインにあわせてカスタマイズできること
- 多言語対応
- クレジットカード決済機能付き
ただし、このような高機能な宿泊予約システムは、料金も高額になる傾向があります。
せっかくOTA手数料を節約しても、予約システムの使用料やクレジットカード決済の手数料を支払っていては、ホテルの利益率を思うように上げることはできませんよね。
その解決策のひとつが、外部の予約システムではなく、自社宿泊予約システムを導入することです。
例えばWASIMILの自社宿泊予約システムは、上記のすべての機能を備えているうえに、クレジットカード決済の手数料もかかりません。
PMSやCRM、レベニューマネジメントなどとも連携しているので、簡単に予約を一元管理できます。
2.OTAから公式サイトに誘導する
ホテルの直販率を50%に上げるための2つめの施策は、OTAのサイトに訪れたユーザーを公式サイトに誘導することです。
「ビルボード効果」でお伝えした、顧客がOTAサイトで見つけたホテルを予約する前に、公式サイトを閲覧するという傾向を活用しましょう。
しかし、ポイントが貯まるといったユーザーへのメリットがあるOTAではなく、あえて公式サイトから宿泊予約をしてもらうためには、ただ公式サイトとリンクさせれば良いというわけにはいきません。
公式サイトを魅力的なものにするのはもちろん、下記のような直接予約のメリットをアピールして、公式サイトからの直接予約を後押ししましょう。
- 公式サイトでのみベストレートを保証
- 公式サイトからの予約に対して特典を提供
- ロイヤルティプログラムを提供
このようにすれば、OTA手数料を支払うことなく、OTAを販売チャネルのひとつとして活用することができます。
3.OTAサイトの口コミを分析する
ホテルの直販率を50%に上げるための3つめの施策は、OTAサイトの口コミを分析することです。
TripadvisorなどのOTAサイトやSNSには、ホテルに対するレビューが多く書き込まれています。
オンラインでホテルを予約するユーザーの多くが、こういった情報を参考にしているため、特にネガティブな口コミには迅速に対応することが重要です。
お客様がどのような点に不満を感じたのか、できるだけ情報を引き出し、解決策を提案しましょう。
リカバリー次第では、その客様をリピーターにすることも可能です。
一方、良い口コミは、Googleの上位記事にリンクさせ、ホテルをリサーチしている見込み顧客が、必要なときに参照できるようにしておきましょう。
4.オンライン広告を利用する
ホテルの直販率を50%に上げるための4つめの施策は、オンライン広告を利用することです。
オンライン広告の例としては、検索連動型広告やSNSの有料キャンペーン(例:#○○とつけて投稿すれば○名様に宿泊券プレゼント)があげられます。
ただし、OTAが膨大な広告費を投じている場合が多いため、OTAの広告の方が大きく目を引いているのが実情です。
実際、2019年度agodaやBooking.comなどのOTAを展開しているプライスライングループは約40億ドル、Expediaは約50億ドルもの広告費をGoogleに支払っています。
そのため、自社で広告を出す際には、以下のマーケティング手法を用いて、SEOに強い広告作りをすることが重要です。
- 検索エンジンマーケティング
- メタサーチマーケティング
- ソーシャルメディアマーケティング
- リマーケティング
Google無料予約リンク
2021年3月に、Googleはこれまで有料だったGoogleホテル予約リンクを「無料予約リンク」として開放することを発表しました。
つまり、Googleに無料でホテル公式サイトのリンクを掲載できるようになったのです。
無料予約リンクは、クリック課金型のGoogleホテル広告とは別のもので、有料のホテル広告より下の位置に表示されます。
より目立つ位置に掲載されたい場合は、有料のホテル広告を利用がおすすめです。
とはいえ、広告費無料でオンライン上での露出を増やせる手段を活用しない手はありませんよね。
Instagram広告
Instagram広告を配信する場合は、ターゲティングが重要です。
Instagaram広告のターゲティングの種類には、つぎの3種類があります。
- コアオーディエンス
ユーザー属性、興味・関心、行動など、Facebook/Instagramユーザーの情報をもとに、広告配信の条件を絞り込む手法。 - カスタムオーディエンス
ユーザーリストをアップロードし、リストにあるユーザーに絞って広告を配信、もしくは、そのユーザー以外に広告を配信する手法。 - 類似オーディエンス
カスタムオーディエンスをもとに、ユーザー属性、興味・関心、行動などが類似しているユーザーにターゲットを絞って広告を配信する手法。よりコンバージョンの見込みが高い潜在顧客へのアピールが可能。
最近は、ミレニアル世代・Z世代を中心に、Instagramでホテルを検索・予約するユーザーが増えてきています。
適切なターゲティングを行うことで、高いマーケティング効果が期待できるでしょう。
5.Google アナリティクスを利用して戦略を立てる
ホテルの直販率を50%に上げるための5つめの施策は、Googleアナリティクスの活用です。
Googleアナリティクスを使って顧客データを分析すれば、直接予約を増やすための、より有効な戦略が立てられるでしょう。
Googleアナリティクスは、Webサイトの以下ような情報を解析するツールです。
- アクセス数
- どのような経緯でWebサイトにアクセスしたのか
- Webサイトに滞在した時間
- 顧客が使用しているデバイスの種類
上記の情報を分析すれば、顧客がより使用しやすい公式サイト作りや、クリックしやすい広告作りが可能になります。
また、公式サイトがユーザーにどの位の影響を与えているか、どの層のユーザーが多いのかもチェックすることができます。
Googleアナリティクスの注意点
Googleアナリティクスを使用する場合は、決済画面(予約画面)と、宿を予約する決め手となったページを区別して分析する必要があります。
なぜなら、予約の決め手となったページを分析して活用することで、公式サイトにより多くの顧客を誘導できるからです。
ただし、トラフィックのソースを分析する場合、キャンペーンや割引広告経路の予約は、的確なデータとならないため注意しましょう。
コンバージョンの決め手となったページは、Googleアナリティクス内の「アシストコンバーション」で分析可能です。
また、上記のデータと合わせて、普段使用している旅館管理システムの顧客データを分析すれば、公式サイトやWeb広告の効果をより的確に把握できます。
6.CRM(顧客管理システム)を導入する
ホテルの直販率を50%に上げるための6つめの施策は、CRM(顧客管理システム)の導入です。
よりパーソナライズされたサービスを提供し、顧客体験を向上させるためには、CRMによる顧客情報の収集・分析が必要不可欠と言っても過言ではありません。
そして、ホテルのサービスに満足したお客様は、ニュースレター等へのメールアドレス登録へのハードルが比較的に低くなるでしょいう。
顧客の属性や好みなどを細かくセグメント化し、特別感のあるキャンペーンを配信していけば、OTA経由の顧客を直接予約のリピーターへと変えていくことも可能です。
結果として、直販率のアップ、利益率のアップにつながっていきます。
WASIMILのCRMは顧客志向360°
WASIMILのCRMは、集めた顧客データをさまざまなフィルターでセグメント化し、効果的なマーケティング戦略に活用できます。
そのため、「顧客データを集めたけど、活用の仕方がわからない」という方にもおすすめです。
さらに、表記揺れの修正から、メールアドレスの検証、電話番号のフォーマット化まで、顧客データを自動補正。常に最適化されたデータをもとに、顧客分析ができるのも強みです。
また、OTAの顧客情報も含め、CRMの顧客履歴はすべてPMSに自動的に反映されるので、従業員間の情報共有がスムーズにでき、お客様に一貫したサービスを提供することができます。
まとめ
この記事では、ホテルが直販率を50%に上げ、利益率を向上させるための施策をOTAのメリット・デメリットを踏まえながらお伝えしてきました。
特に中小規模ホテルにとって、OTAサイトへの掲載は、ホテルの認知度を高めるための有効な手段です。
しかし、OTA経由の宿泊予約は、宿泊代金の1割以上が手数料として差し引かれるので、ホテルにとって大きな負担となります。
ホテルの利益をアップさせるために、今回ご紹介した下記のような施策で、直接予約を促進していきましょう。
- 顧客が使いやすい公式サイトを作る
- OTAから公式サイトに誘導する(ビルボード効果)
- OTAサイトの口コミを分析する
- オンライン広告を利用する
- Googleアナリティクスを利用して戦略を立てる
- CRM(顧客管理システム)を導入する
直接予約を伸ばして、ホテルの収益をアップさせる方法について、お気軽にWASIMILにご相談ください。