新たな観光スタイルとして、ホテル業界でも注目されている「サステナブルツーリズム(持続可能な観光)」への需要が、コロナ禍でさらなる高まりを見せています。
2021年4月22日のアースデイにちなんで発表された、Booking.comの「サステイナブルな旅行への需要の高まりに関する調査結果」では、8割以上が、サステナブルな旅行を優先する意向を示しました。
また、以前から環境保護やサステナブル投資に関心が高いといわれていたミレニアル世代に加え、最近では、中高生が一般社団法人「Sustainable Game」を設立するなど、より広い世代でサステナビリティが支持されはじめていることが覗えます。
ミレニアル世代をはじめ、若い世代の顧客や環境意識の高い顧客層をホテルに集客していく上で、サステナブルを意識した取り組みや、サービスの提供が必要不可欠といえるでしょう。
こうした 顧客の指向性を意識して、ホテル運営を行ってい ことは、自社ホテルのブランドを確立するとともに、より、ターゲットを絞った ホテルマーケティング を実践することにもつながります。
これまでWASIMILブログでは、例えば、閑散期などに実践できるホテルへ集客するアイデア を紹介してきました。
では、具体的にサステナブルツーリズムに関心の高い顧客層をホテルへ集客するアイデアとして、どのようなこと ができるのでしょうか?
この記事では、中小規模のホテル・旅館で簡単に取り入れられる、サステナブルツーリズムのアイディアをご紹介していきます。
ホテル業界注目のサステナブルツーリズムとは?
ホテル業界で注目されている「サステナブルツーリズム」とは、観光地本来の姿や資源を持続的に保てるように配慮した「持続可能な観光」を意味します。
サステナブルツーリズム=自然環境保護、というイメージをお持ちの方も多いかと思いますが、実はそれだけではありません。
交通渋滞、騒音、ゴミ問題など、地域住民の生活環境への悪影響を極力減らすことや、地域文化や経済の活性化といった、旅行者だけでなく、旅先に住む人々の生活も豊かになるように配慮した観光全般が、サステナブルツーリズムなのです。
海外、とくにヨーロッパではサステナブルツーリズムの人気が高く、その流れを受けて、近年ではBooking.comなどの大手OTAもサステナブルツーリズムを奨励する取り組みに力を入れています。
日本でもサステナブルを導入するホテルや、サステナブルホテルが話題になってきましたが、グローバル市場調査会社ユーロモニター・インターナショナルが2020年に実施した「持続可能な観光トップ国」の調査によると、日本の順位は世界53位。
アフターコロナのサステナブルツーリズム需要には、まだまだ足りないというのが現状です。
サステナビリティを意識したホテル経営の必要性
サステナビリティを意識したホテル経営は、アフターコロナのホテル集客にとって、大きなプラスになることが予想されます。
たとえば、ILTM (International Luxury Travel Market)が2020年10月に発表したトレンド分析「Global HEATMAP」では、今後1年間の富裕層の旅行意向について、つぎのような回答が見られました。
- 9割近くがサステナビリティを重要視
- 35%がサステナブルなブランドやサービスに、10%余分に支払ってもかまわないと回答
また、世界最大のOTAである、Booking.comが2020年に発表した「サステイナブル・トラベル」に関する調査結果でも、旅行客の82%がサステナビリティの重要性を感じていると回答しています。
しかし同時に、
- 50%の旅行者が、サステナブルな旅先の選択肢が十分ではない
- 38%が、サステナブルな宿泊施設をどうやって見つければいいのかすらわからない
と回答。
旅行需要回復を担うカギとなるのは、富裕層とミレニアル世代といわれており、サステナビリティへの関心がもっとも強いのも、この層の旅行者たちです。
サステナブル意識の高い海外からのゲストや、ミレニアル世代のサステナブルツーリズム需要を満たすことは、これからのホテル・旅館にとって非常に重要な課題といえるでしょう。
日本国内のサステナブルホテルの例
サステナブル体験を提供するホテルは、とくにヨーロッパで高く支持されていますが、最近では日本でも見かけるようになりました。
世界で唯一のBIO(=オーガニック)基準を規約とする、「ビオホテル協会(Die BIO HOTELS)」が認定する宿泊施設も、国内に3軒あります。
「BIO HOTELの取り組み」
- 食事や飲み物、コスメ(シャンプー・石けん・スキンケア等)は、すべてオーガニック
- タオル、ベットリネン類、施設の建材や内装材も可能な限り自然素材を使用
- 再生可能エネルギーの積極的な活用を含め、CO2排出量削減
参考までに、国内にあるBIO HOTEL認定の宿泊施設3軒をご紹介しますね。
カミツレの宿 八寿恵荘(やすえそう)
八寿恵荘のモットーは、「訪れるすべての方が心からリラックスできるような場所となるように」。
土づくりからこだわったカミツレ(カモミール)畑や、カミツレエキスの製造工場、カミツレエキスを使用した「華密恋の湯」が体感できます。
化学調味料や添加物を一切使用せず、自社農園で採れた季節折々の有機野菜を使った、こだわりのお食事も好評です。
所在地:
〒399-8604
長野県北安曇郡池田町広津4098
URL:http://yasuesou.com
おとぎの宿 米屋(よねや)
米屋の温泉は、露天風呂から、大浴場、内風呂、ミストサウナまで、すべてが源泉かけ流し。
また、厳選された食材で作られた食事や、著名な職人の手で作られた特別な椅子が、各客室に置かれているのも米屋の魅力です。
所在地:
〒962-0043
福島県須賀川市岩渕字笠木168-2
URL:http://e-yoneya.com
Auberge erba stella(オーベルジュ エルバステラ)
オーベルジュ エルバステラは、北海道で、野菜ソムリエの夫婦が営む全3室の小さな宿です。
野菜は自家菜園の有機野菜をメインに、肉・魚介類は不使用。
乳製品・卵は、生態系や環境に配慮し、安全で持続可能な方法でつくられた生産者のもののみを使用するというこだわりぶり。
ゲストに会話を楽しんでもらうために、客室にテレビが置かれていないのも特徴です。
所在地:
〒071-0734 北海道 空知郡中富良野町鹿討農場
URL:https://www.erbastella.com/
中小ホテルにおすすめ!サステナブルなホテル経営のアイディア
あなたのホテルで、お客様にサステナブル体験を提供するために、どのようなことができるでしょうか?
中小規模のホテルで、比較的簡単に取り入れられる、サステナブルなホテル経営のアイディアをご紹介していきます。
1.チェックインのペーパーレス化
ホテルにサステナビリティを導入するアイディアの1つめは、チェックインをペーパーレス化することです。
チェックインを従来のレジカードから、タブレット端末でのセルフチェックインに変えることで、紙資源のムダをなくし、森林資源の保護や、ゴミの削減につながります。
また、レジカードに入力していただいた内容を、スタッフがPMSに入力し直す手間が不要になるため、業務の効率化や人件費削減にも役立ちます。
2.アメニティを選択制に
ホテルにサステナビリティを導入するアイディアの2つめは、客室のアメニティを選択制にすることです。
歯ブラシやくしなど、ホテルのアメニティを使い捨てにするのが贅沢だと思われていた時代もありましたが、人々の贅沢の定義は、少しずつ変わってきています。
なかには、そういった使い捨てのアメニティを見て、ネガティブな印象を抱くゲストも少なくありません。
たとえば、マリオットのような大手のホテルグループでも、予約の際に必要なアメニティを選択するようになっています。
「これって、本当に必要かな?」と、ゲストに考えてもらうことも、サステナブル体験のひとつです。
3.リネン交換を減らす
ホテルにサステナビリティを導入するアイディアの3つめは、リネン交換の頻度を減らすことです。
たとえば、
「ベッドリネン交換不要」のサインを客室に設置
タオル交換は、バスルームにバスケットを設置して、ゲストが交換してほしいタオルだけをその中に入れてもらう
連泊のゲストに対して、「リネン・アメニティ交換不要プラン」を提供
といった方法で、リネン交換の頻度を減らすことができます。
洗濯の回数が減ると、水資源の節約になり、環境負荷が軽減されます。
4.プラスティックを減らす
ホテルにサステナビリティを導入するアイディアの4つめは、プラスチック製品を減らすことです。
2021年3月9日に閣議決定した「プラスチック資源循環促進法案(プラスチック新法案)」でも、ホテルのプラスチック製アメニティを有料化することが検討されています。
この機会に、「紙カミソリ」や「竹歯ブラシ」などの導入を検討してみるのも、いいかもしれません。
5.シャンプーはポンプ式に
ホテルにサステナビリティを導入するアイディアの5つめは、シャンプー・ボディソーブをポンプ式にすることです。
ミニボトルの場合、まだ使いかけでもシャンプーを捨てることになります。
また、そのたびにプラスチックを使い捨てにすることに。
使い切りのパウチは一見、ムダがないように見えますが、やはりパウチを使い捨てるので、資源のムダやゴミ問題につながります。
シャンプー・ボディーソープを詰め替え可能なポンプ式にすることで、自然環境に配慮することが可能です。
6.ヴィーガンメニューを取り入れる
ホテルにサステナビリティを導入するアイディアの6つめは、ヴィーガンメニューを取り入れることです。
最近では、動物愛護の理由だけでなく、自然環境保護のためにヴィーガンになる人が増えています。
海外には、ヴィーガン専用のホテルまであるほどです。
コロナ後のインバウンド集客には、ホテルがヴィーガンに対応しているかどうかも、重要なポイントになるでしょう。
7.朝食ビュッフェは小さなお皿で並べる
ホテルにサステナビリティを導入するアイディアの7つめは、朝食ビュッフェを大皿ではなく、小皿で並べることです。
大皿でビュッフェを提供すると、どうしてもフードロスが出てしまいますよね。
その点、あらかじめ小皿に小分けしたものを並べるスタイルなら、必要な分だけ補充すればいいので、フードロスを最小限に抑えられます。
また、新型コロナウイルスの感染予防策としても有効です。
8.できるだけ地元の食材を使う
ホテルにサステナビリティを導入するアイディアの8つめは、レストランの食事に、地元の食材を使うことです。
地域住民の生活を豊かにするのも、サステナツーリズムの目的のひとつ。
できるだけ、地域に還元できるよう、地元の食材を選びましょう。
9.地元密着型ツアーと提携
ホテルにサステナビリティを導入するアイディアの9つめは、地元密着型ツアーとの提携です。
たとえば、地域の伝統文化の体験ツアーなどと提携し、パッケージとして販売したり、予約の際にオプションとしてアップセルすることもできます。
ほかにも、地域のレストランなどと提携して、ゲストをお互いに誘導し合うことも可能です。
10.自転車の貸し出し
ホテルにサステナビリティを導入するアイディア、最後は、自転車の貸し出しです。
自転車は、CO2排出量ゼロの環境に優しい移動手段。
コロナ禍の移動にも便利です。
自転車貸出付きの宿泊パッケージを提供するのも、いいですね。
まとめ
今回は、サステナブル(持続可能)なホテル経営の重要性や、中小規模のホテルで導入できるサステナブルなアイディアについてお伝えしてきました。
コロナ禍で、人々のサステナビリティへの関心は、さらに高まっています。
今後のホテル集客においても、非常に大切なポイントになることは間違いないでしょう。
ホテルシステムWASIMILは、 ホテル管理システムの中でも顧客目線でホテル運営をサポートできるシステム です。
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