企業が、FacebookやTwitter、YouTube、Instagram、LINEといったSNS(ソーシャルネットワークサービス)を含む、ソーシャルメディアを活用した効果的なマーケティングを運用する企業の参入が相次いでいます。実際SNSを運用するにあたり、アカウントの管理を含めたキャンペーンなどの企画やアイデアも考案する、小規模な専属チームを編成することがとても大切になります。
集客につなげるソーシャルメディア運営で大事なポイントは、ホテルのブランディングを正しく理解しながら、一貫性のある世界観やポリシーのもとでクオリティーの高いコンテンツを発信し続けることです。さらに、メディアごとの特性を活かしながら、リーチしたいユーザー層に合わせ、無料、有料に関わらずさまざまなSNSを駆使して情報発信をすることも必要になってくるはずです。
今回の記事では、中小ホテルにおいて、マーケティングのツールとして注目を集めているSNSをどのように活用し、ユーザーにとって魅力的でクリエィティブなコンテンツを発信していくか。そして最終的な目標の集客にどのようにつなげていくのか。そのポイントをいくつかご紹介します。
1.ホテルのコンセプトをしっかり掘り下げる
SNSを活用するに当たり、ソーシャルメディアの特性を理解する必要があります。前提として情報を一方的に発信するWebサイトと異なり、ホテルとユーザーの双方向にコミュニケーションを取ることができるのがソーシャルメディアの強みといえるでしょう。
その上で まず、ホテルのマーケティング施策を立てる上で、一番最初に自分のホテルの優れた点はどこかをしっかり考えましょう。
例えばホテルチェーンは、客室を一律料金設定し、種類豊富なアメニティグッズを用意したりと、全国どこにいっても変わらないサービスを提供してくれます。
一方で中小ホテルは、ホテルチェーンでは実現することが難しい特別なホスピタリティを発揮することができます。
例えば、チェックイン時に渡すウェルカムギフトや、感謝の気持ちを込めた手書きのメッセージを客室に置くといったゲストとの感情的なつながりを生み出すサービス。
また、いつもと違う客室の間取りや、アートで彩る非日常的な空間、スタイリッシュなデザインのミニバーなどといった、ゲストの潜在意識に刷り込むニーズ。そのような細かいサービスやニーズに意識を置くことで、ゲストの感動を生み出すことがあります。
またこのような思い出に残る体験をしてもらうことで、そのゲストは、ソーシャルメディアや口コミでその感動を人に伝え広めていく役割を果たしてくれる一面があるということも決して忘れてはいけません。
一貫したブランドコンセプトを持つ中小ホテルのソーシャルメディアマーケティングをスタートするときには、このようなことを念頭に置く必要があります。
2.ホテルの世界観をビジュアルで表現する
ホテルのSNSマーケティングにおいて、最も重要なことの1つに、宿泊予約をする決める前のSNSユーザーに対して、ホテルの世界観をビジュアルで直感的に伝えることです。
この行為自体、決して難しいことではありませんが、例えばInstagramの場合、ユーザーがフォローすることで、投稿(ポスト)がフォロワーのタイムラインに表示されます。Instagramの場合ですと、10枚まで写真や動画を投稿できます。
そのため、ひとつでもホテルのブランドアイデンティから外れた写真や動画が入ってしまうと、フォロワーを減らす要因にもつながり、集客につなげることができなくなります。
ホテルのブランディングやポリシーをしっかりと分析し、その世界観に沿った写真や動画の投稿を行っていく必要があります。
3.投稿コンテンツの品質を上げる
投稿する上で画像や動画の世界観を統一させることはとても大切なことなのですが、事前に注意するべきポイントがあります。
・多少な広告宣伝的な投稿は問題ありませんが、フォロワーに対してメリットが伝わらない、感じない、または興味を持ってもらえない投稿はスルーされてしまいがちです。
・複数のSNSアプリケーションを利用して投稿するクロスメディアプロモーションは、フォロワーのフィルタ設定により投稿が表示されないことも。Facebookのフォロワーは、効率的に有益な情報や体験を求めています。つまりホテル側からの謳い文句を感じさせるような一方的な宣伝には全く興味を持ってもらえません。
・SNSユーザーは、投稿者がカジュアルに発信しているのか、ビジネス目線で発信しているのかを敏感に判別しています。ユーザーに支持されているソーシャルメディアは、企業が投稿者のキャラクターを前面に出す場合もありますが、しっかり線引きをする必要があります。
必ず覚えておくことは、フォロワー全員が自分たちの投稿したすべての情報を閲覧しているわけではないということ。
一方的なメッセージの発信ではなく、過去に投稿した世界観を受け継ぐようなブランドメッセージを発信し続けることで、まだフォロワーになっていないユーザーへのアプローチも可能になります。
8割を削ぎ落とすコンテンツ企画の発想
ソーシャルメディアの舞台では、企業のアカウントはより高いクオリティーの投稿を求められています。
言い換えれば、かわいい赤ちゃんや、自慢したいペット、週末のプライベートな時間を見てみたいという目的でログインしてくる人はいません。企業のアカウント自体がユーザーにとってソーシャルメディアにサインアップするという理由になるケースは考えにくいですが、一度SNSにログインすれば、フォロワーとの関係値を深める可能性が一気に高まります。
ここでは、品質(クオリティー)、価値観の共有、役立つ情報の3つがポイントになります。
「トップ20%ルール」
■投稿するコンテンツのクオリティーは上質ですか?
Instagram上で表示されるコンテンツの中で、自分たちが投稿する写真のクオリティーが上位20%を占めるような高い品質を担保できているのかを意識してみてください。
逆に言えば、Instagramにありふれているホテルの投稿と同じものになっていませんか?そのコンテンツは、トップ20%に入ると自信を持って言えますか?
■ホテルの価値観を共有できていますか?
投稿した内容は、フォロワーに対して共通の価値観を共有できていますか?
例えば、ヨガや瞑想に興味を持つフォロワーが場合、あなたのホテルがゴルフ場をオープンしたという情報を提供しても、あまり興味を持ってもらえないかもしれません。
一部フォロワーの中にはゴルフに興味がある人もいるかもしれませんが、ヨガや瞑想に興味を持つ人たちにとっては適切な情報提供ではないと考えられます。
ここでは、たくさんある写真やコンテンツの中から、「20%ルール」を優先しながら、クオリティーの高い写真や動画を通じてお互いの価値観を分かち合えるかを確認してください。
■それは本当に役立つ情報ですか?
投稿する前に、見る人にとって何の得が生まれるのか、何の役に立つのかを確認してください。
例えば客室に最新の機器を設置したという情報を投稿した時、フォロワーにとって本当に役立つのか、得をする情報を提供できているかを考えてください。
また、メールマガジンに登録してもらったり、Facebookをフォローしてもらう。プレゼントキャンペーンを実施したり、ユーザーのモチベーションを誘引させるというインセンティブプロモーションを仕掛けるといったことが必要になる場合もあります。
エンゲージメント率を意識する
もちろん、SNSを運営する上で、すべてを完璧に進められる企業はそう多くありません。
ですが、SNS運用に長けた中小ホテルでは、ソーシャルメディアマーケティングの考え方をしっかりマスターして運用しています。
それは、ユーザーが投稿に反応を示した割合を示す「エンゲージメント率」を分析すれば明確です。
エンゲージメントとは、企業やブランド、サービスなどに対してユーザーが愛着を持っている状態のことをいいます。
投稿に対してユーザーがどれだけ反応(いいね、クリック、シェアなど)したかを示すエンゲージメント率が高ければ高いほど、ユーザーは安定してあなたのホテルを支持してくれているということになります。
SNS投稿ルールを徹底する
ホテルのソーシャルメディア戦略を考える時、SNSをはじめ、ブログやニュースサイト、口コミサイトなど、いくつかのメディアを活用することもエンゲージメントを増加させる要因になることがあります。
ただし、その場合、ユーザーに対して同じ情報を各SNSで一律に投稿するのはあまりおすすめできません。
4.SNSごとの特性を踏まえながら差別化を考える
ホテルのソーシャルマーケティングのアイデアを考案する際、SNSごとの違いや異なる特長を理解し、機能やユーザー動向など、有効に使い分ける必要があります。
写真や動画をメインに、鋭い視点を踏まえたビジュアルメッセージが求められます。
投稿頻度やフォロワーのエンゲージメント率もInstagramのアルゴリズムで判別され、あなたのInstagramの露出割合を大きく左右します。
米国のデジタルマーケティング専門家である、Neil Patel氏によれば、投稿頻度が少ないと、最終的にはフォロワー数も減ってしまっていくと語っています。
つまり、あなたが投稿するコンテンツのクオリティーだけでなく、ユーザーの関心の高さや注目度、投稿頻度もInstagram運用には重要になります。
FacebookもInstagramと同じように、投稿に対してクオリティーが求められ、ユーザーからの関心の高さや注目度が重要視されます。
投稿に対して「いいね!」やコメントの数、シェアの数が少ないと、アルゴリズムにより、フィードの表示が少なくなってしまいます。
Facebookは、ユーザーにとって本当に求めている情報なのか、有益な情報なのか、エンターテインメント性があるかなど、多角的な面から魅力的なコンテンツなのかを分析しています。
Twitterでは基本140文字を上限に、ユーザーに対してリアルタイムで簡潔に伝えるというのがキーワードになります。
文字だけでなく、画像をツイートし、ストーリー性のある内容にすることも可能です。
また、本文の途中にドット(.)を追加して日本語URLのように見せる方法など、140文字の制限を越えてツイートする方法も存在しています。
また、Twitterには、投稿をフォロワー全員ですばやく共有できるリツイート(RT)機能があります。
自分の過去の投稿はもちろん、他のユーザーの投稿を自分のタイムラインに表示できますので、他のSNSに比べても圧倒的な拡散効果が期待できます。ホテルのブログの宣伝など認知拡大を図る場合には、InstagramよりTwitterのほうが優れているといえるでしょう。
また、Twitterでは投稿をカテゴライズして検索を容易にするハッシュタグ(#)の使い方がコンテンツ露出に大きな役割を果たします。
タグを付けることで同じキーワードでの投稿を簡単に検索できる上、趣味や関心が似たユーザー同士で、話題を共有できるようになります。
例えば、イギリスのCowly Manorホテルがクリスマスに催すイベントについて12投稿以上した時に、すべてのツイートに「#AVeryCowleyChristmas」のハッシュタグをつけました。
これはFacebookでもInstagramでももちろん使われる機能ですが、Twitterですと、同一のハッシュタグをつけたツイートが増えることで、多くのユーザーからの注目度もあがりやすいという傾向があります。
5.SNSの有料オプションを検討する
TwitterやFacebook、Instagramといったソーシャルメディアは、大勢のユーザーに向けて認知のきっかけや購買につながる役割を果たし、ビジネスの世界でも必要不可欠な存在になっています。
さまざまなコンテンツをSNSに投稿してユーザーと交流してフォロワーを増やした企業(一般的にオーガニック(無料)・ソーシャルメディア・マーケティングが中心)は、過去のユーザーや潜在的なユーザーとつながることの大切さを再認識しています。
現在はFacebookやTwitterを中心により多くの企業が登録し、その日々の投稿数も飛躍的に増加しています。
これまでの間、無料で行うSNS運用では、まず人目につくために行われ、マーケティングのステップの中でも「認知」を拡大する目的で使われていました。
最近ではソーシャルメディア側でも「認知」だけには留まらない活用を促せるように、見込み客の獲得や、エンゲージメントの向上につながるさまざまな有料オプションの導入を始めています。
ソーシャルメディアの有料サービスを導入することで、無料サービスでは実現できない新たな効果が生むことも可能です。
・豊富なキャンペーンを取り揃えるFacebookでcは、興味関心を示しそうな特定のユーザー層にリーチするためのツールがあります。「いいね!」やフォロワー数を増やす目的には適していて、初心者にはおすすめのキャンペーンです。
・Instagramはイベントに関連した広告を展開するのにとても適したソーシャルメディアです。一般的に多く活用されていませんが、Facebookと連動することで、ユーザーのターゲティングをより強くし、興味関心を持つ新しいユーザーとつながる可能性が高まります。
・Twitterのフォロワーキャンペーンは、数週間から数ヶ月の期間で、アカウントのプロモーションやフォロワー数の拡大を加速させるのに役立つ便利な方法です。
この活用方法が完璧なアイデアとは言い切れません。
でも、ホテルのソーシャルメディアキャンペーンを企画する上で、有料オプションの活用を検討することは重要なプロセスです。有料オプションで得られる効果があるという認識を持つことがまず必要です。
まとめ:ホテルでSNSマーケティングを実践するために重要なこと
ホテルのSNSマーケティングの中核となるのは、SNSマーケティングのアイデアを組み立ててしっかりと理解し、実践することが最初のステップです。まず無料のソーシャルマーケティングを計画し、実行するには以下のことを忘れずにしましょう。
1. ホテルのスタイルを前面に出しましょう。
2. 一貫した世界観、メッセージを発信しましょう。
3. 20%ルールに則って、上質なアイデアやコンテンツを投稿しましょう。
4. ソーシャルメディアの特性に合わせて、内容や情報を調整しましょう。
5.無料のソーシャルメディアを利用しながら、キャンペーン目標によっては有料サービスの導入を考えましょう。
本記事が、あなたのホテルのソーシャルマーケティングのアイデアを整理し、実施する上で役立てれば嬉しいです。
*この記事は、Rank Defenderの創業者であるJase Rodley氏の協力をもとにWASIMILが翻訳・編集を行ったものです。
オリジナル記事:”Essential Hotel Social Media Marketing Ideas“