ホテルには閑散期があります。業界全体が売上不振に陥ると考えられてきたホテル業界の閑散期。しかし、閑散期に売上減少を防ぐ方法は本当にないのでしょうか。
実は、閑散期であろうと、集客対策を行い売上を伸ばす方法は確かに存在します。収益性の高いホテルは閑散期対策を万全に行い、売上の急落を防止し安定した利益を保つことに成功しています。
今回の記事では、ホテルの閑散期にどのようにして集客を成功させるのか、閑散期に特化した集客対策について紹介していきます。
全てのホテルが同じ時期に閑散期を迎えるわけではありません。まずは閑散期を正確に見極め、どの時期にどれほどの売上を落としているのかを分析しましょう。
閑散期の時期を正確に予測するために必要なのは過去のデータ。年間を通して月毎の収益や客室稼働率をデータにまとめていくことで、具体的にいつからいつまでが閑散期なのかを見極めることができます。
閑散期でなく繁忙期であっても、曜日ごとに大きく数字が異なります。一般的にホテルは木曜日から日曜日までの稼働が高い傾向にあり、月曜日から水曜日までは稼働率・売上共に落ち込みます。合わせて確認し、ホテルの売上・稼働率に関わる傾向をつかんでおきましょう。
どのホテルにもそれぞれに「メインターゲット層」があるはずです。ビジネスホテルならビジネスマンの一人利用、お洒落なホステルなら若い世代がターゲットとなります。
メインターゲットの興味を強く惹きつけるべく、戦略的なマーケティングを行うことは、ホテルマーケティングの基本です。
しかし、閑散期の集客対策となると、メインターゲット層へのアプローチのみでは不十分。新たなターゲット層を開拓し、そのターゲットに向けてアピールする必要があります。
新たなターゲット層を開拓する際には、以下の2つに目を向けると良いです。
・旅行スタイルごとのターゲット層
・特定の条件に該当するターゲット層
それぞれどのようなターゲット層のことを意味しているのか、ここから詳しく具体例を挙げながら解説していきましょう。
旅行といっても様々な旅行スタイルがあります。これまでの価値観や働き方がガラリと変化し、それに伴い旅行スタイルにもどんどん新しいスタイルが生まれています。
これまで耳にしなかったような新しい旅行スタイルが注目を集めており、旅行スタイル自体の多様化が進んでいるのです。
ここからは、以上の6つの旅行スタイルについて紹介していきます。新たなターゲット層を開拓するきっかけになるものがないか、考えてみてくださいね。
心と体の健康を向上させる目的の旅行をウェルネス旅行と言います。うつ病など、精神疾患を患う人の数が年々上昇傾向にある中、「癒し」を目的とした新しい旅行スタイルとして注目されています。
ウェルネス旅行は、森林浴やヨガなどのワークショップが選択できたり、湯治や鍼灸などの施術を受けられたりと、まさに「心と体を癒す旅」の要素が詰まっています。
働き盛りで心身ともに疲れ切っている人なら誰もがきっと興味をひかれることでしょう。
ワークとバケーションを組み合わせたワーケーションは、その名の通り仕事と休暇の両方を目的とした旅行スタイルのことです。
出張先で休暇を楽しむこと、もしくは休暇を楽しみながら仕事をする、というワーケーションはコロナ禍でさらに知名度と人気を上げた新しい旅の形。
日本では、ワーケーションの普及を目的とした「ワーケーション自治体協議会」が2019年11月に発足しました。参加自治体は99と、発足直後から増加し続けています。
バケーションを満喫できる雰囲気でありながら、仕事のしやすい環境が整っていることがワーケーションを売り出すために必要な条件です。快適なWi-Fiや、作業の捗るデスクなどは必須となります。
世界中の平均寿命が伸びている中で、団塊世代は非常に有力なターゲット層。日本では団塊世代の人口が最も多く、そのほとんどが定年を迎えています。
時間的な余裕がある団塊世代は、閑散期でもターゲットにしやすい層であると言えます。団塊世代に喜ばれるものと言えば、やはり高いホスピタリティやゆったりとくつろげる客室、温泉と美味しいお食事に関しては言うまでもありませんね。
近年ではペット同伴で宿泊可能なホテルが増えています。愛犬家、愛猫家の方にとっては、旅行の際にペットを預ける必要がある点がネックになり、なかなか宿泊を伴う予定を入れづらくなってしまうもの。
ペット宿泊可能なホテルなら、これまでなかなか旅行ができなかった層を一気に引き込むことが可能です。ペットが単純に宿泊できるだけでなく、ペット用のアメニティなどを充実させることで、さらに満足度を高めることができるでしょう。
今も昔も定番の家族旅行。しかし、その中身は大きく変わっています。家族構成や家族のあり方が多様化してきている昨今、家族旅行に求められているものは何なのかを常に意識する必要があります。
お子さまが成長したときに思い出として振り返ることができるような施策や、ホテル独自の家族向けサービスを考えていく必要があるでしょう。
家族旅行の需要はなくなることがありません。閑散期の宿泊率を高めるためにファミリー層に目を向けるのも一つの方法だと言えます。
女性もバリバリ働く今の時代。日々頑張っている自分へのご褒美として素敵なホテルに滞在する、いわゆるご褒美旅行も新しい旅行スタイルの一つです。
ご褒美旅行のターゲット層は20~30代の女性と考えるのが自然ですが、特に重要なポイントは、観光目的でなくホテルステイを楽しむために宿泊しているという点。
ホテル内のスパ利用や温泉利用、カフェやラウンジなどのスペースが充実していれば、ご褒美旅行を検討しているターゲット層に効果的にアピールすることができます。
旅行スタイルからターゲット開拓する方法以外にぜひ実践していただきたいのが、これからお話しする3つのターゲットについて深掘りすることです。
その3つのターゲットとは以下の通りです。
それぞれについて詳しく解説していきましょう。
例えば、夏の北海道のホテルであれば、避暑地として暑い地域からの顧客をターゲットにできます。逆に沖縄のホテルなら海のないエリアや、夏が極端に短い東北・北海道からの顧客をターゲットにできます。
このように、ホテルのロケーションを活かしたターゲット層を開拓していくのも閑散期の集客対策として有効です。
世代ごとに、旅行に対する意識やニーズは異なります。例えば、以下は世代ごとの年間旅行回数を示したものです。
上記の通り、現在はミレニアル世代が最多ですが、トレンドは常に変化しています。ホテル経営にあたっては、その変化を見逃さないように常に目を配る必要があります。
そして、世代ごとに旅行に対する価値観もニーズも変わります。時間的な余裕のある団塊世代なら、定年退職後の長期滞在プランを打ち出すのもいいでしょう。逆に、忙しいミレニアル世代なら、1泊2日でも十分リフレッシュできる特別感のあるアクティビティを企画してみるのも効果的です。
このように、世代別のニーズを意識した施策を考えることも非常に重要です。
閑散期だからこそぜひ試していただきたいことの一つが、「ニッチなターゲット層にアプローチする」という方法。
ここで言うニッチなターゲットとは、例を挙げると以下のようなターゲット層を意味しています。
例1:何らかの障害を持つ65歳以上のターゲット
65歳以上の人の35%は障害を持っています。この層に効果的な訴求を考えると、以下のようなアイデアが生まれるでしょう。
例2:小さい子供を抱える忙しいママ層
令和元年の保育所等の待機児童数は16,772人。忙しいママ層は決して少なくないはずです。この層への訴求案としては、以下のようなアイデアが考えられます。
この他にも、特定のグループにはさまざまな種類があります。まさにアイデアは無限大。閑散期だからこそ、このようなニッチなターゲット層に対する集客対策を行うことができます。
社内ミーティングなどでアイデアを出し合うと、思いがけず良い案が生まれることは少なくありません。ぜひ議題に挙げてみてくださいね。
ホテルの売上を支えるのは、宿泊客だけではありません。閑散期においては、積極的に会議や宴席を取り込み、売上を確保する方法は一般的かつ効果的な対策だと言えます。
宿泊客以外の顧客にはどのようなものがあるのかイメージがしづらい方のために、ここでいくつかアイデアを紹介しておきましょう。
MICEとは、以下4つの頭文字から成る造語です。
これらは、一度に動員する人数と消費額が大きいことから、大きな経済効果期待されています。企業活動や研究・学会の活動と関連しているケースも多く、観光振興の効果だけでなく、開催される市や都道府県のイメージUPなど、たくさんの波及効果が見込まれるMICE。
閑散期でなくては受け入れることさえできないほどの規模で開催されることが多いため、閑散期対策としてはこれ以上にないほど適していると言えます。
一般客をターゲットに、宿泊以外のホテル用途を考えてみましょう。例えば以下のアイデアが参考になるのではないでしょうか。
これらもまた、繁忙期には受け付けられないアイデアばかりです。閑散期だからこそ、日帰り利用客の取り込みを強化し、ホテル自体の認知度を高めていきましょう。
ホテル=宿泊施設ですから、宿泊客を増やすことばかりに意識が向きがちなのは自然なことです。しかし、上記のようなサイドビジネスを拡大することが、閑散期の売上低迷を防止することにつながります。
まずは現時点での顧客データを分析し、顧客のニーズに合った新サービスを打ち出していきましょう。
「顧客ニーズの変化に対応した次世代のホテルマーケティングのヒント」ではコロナ禍で生まれた新たなニーズと具体例をご紹介しているので、併せて参考にしてみてくださいね。
ホテルの閑散期を乗り切るためには、デジタルマーケティングを効果的に活用しなければなりません。
デジタルマーケティングとは、インターネットや電子デバイスを用いたマーケティングのことを言います。
など、様々な方法でデジタルマーケティングを行うことができます。閑散期には、これらのマーケティング施策を精査し、何が効果的で何が効果的でないかの見極めを行っていくことも忘れずに行いましょう。
ここで、閑散期に特に注力すべき3つのデジタルマーケティング対策について紹介します。
ホテルに宿泊しようと考えた潜在顧客のほとんどは、ネットで情報を集めようとします。このときに、ホテルの情報が上位に表示されると当然有利になります。
Google検索や大規模な検索エンジンにおいて、ホテルが上位表示されるためには、SEO対策が必須となります。閑散期に入念に対策を行い、競合他社よりも有利な立場に立てるようにしておきましょう。
ロングテールキーワードとは3~4単語を組み合わせたキーワードのことです。ネット検索時に、このロングテールキーワードで確実にホテルを上位表示させるよう、SEO対策をしておくことも大事です。
ロングテールキーワードは、キーワードが多くなるため検索ボリュームが少なく、対策が比較的容易にできます。完璧に調整しておきましょう。
一度ホテルの公式サイトへ訪問したことがあるユーザーに、一度離脱しても再度広告を見て戻り訪問させるための戦略をリターゲティングといいます。
リターゲティング広告は追従型広告ともいわれますが、ユーザーが別の調べ物をしていてもホテルの広告が表示されるなど、執拗に追いかけてくれるため効果が高いと言われています。
適切で効果的な広告を設置し、効果的なアプローチができるよう整えておくのも、閑散期にやるべき対策です。
閑散期の集客対策と聞いて真っ先に「値下げ」を思い浮かべる方は少なくないでしょう。しかし、必要以上の値下げはデメリットも多く、対策としては不十分です。
閑散期には、単純に宿泊料金を値下げするのではなく、付加価値を付けた上でコスとパフォーマンスをよく見せる施策の方が大切。
ここでは、価格戦略のヒントとなる3つのポイントについて解説します。
ホテル近隣施設と協力し、新たなプロモーションやプランを企画してみましょう。例えば以下のようなアイデアを参考にしてみてはどうでしょう。
ホテル宿泊時に多く利用されている人気施設やレストランをリサーチし、プランを考えていくのが効果的です。
ローカルビジネスとの連携事例をより詳しく紹介した記事もご覧ください。
ホテル集客の鍵となるのがリピーター。リピーターが増えれば新規開拓せずとも確実に見込み客を増やすことができるため、何としてでもリピーターは増やしておきたいところ。
閑散期には、リピーターに特化した優待プランや割引制度について考えてみましょう。
リピーター優待の具体的な案としては、
などが挙げられます。宿泊回数に応じて特典をランクアップしていくのも良いでしょう。
値下げをすれば当然集客効果はあります。しかし、値下げをすることにより、ホテルのブランドイメージが下がり、通常価格では宿泊したくないと考える顧客を増やしてしまうデメリットもあります。
値下げをする際には、デメリットを念頭に置いた上で価格設定を行うことが重要です。今、とにかく早く集客対策をしたい!と焦って大幅な値下げをすることは絶対に避けるべきです。
効果的なレベニューマネジメントを行うアイディアも多数あるので、値下げをする前に様々な方法を検討しましょう。
閑散期は、スタッフ教育やホテル運営を見直す絶好の機会でもあります。ホテルの顧客満足度を上げるには、スタッフの接客レベルをUPさせることも忘れずに。
研修にじっくり時間をかけることができるのは、閑散期の素晴らしいメリットでもあります。時間を無駄にせず、閑散期を通してスタッフ全員のレベルアップを目指しましょう。
スタッフ教育においては、以下のスキルを積ませることで直接的なホテルの売上アップ効果が見込めます。
クロスセリングとは、関連する商品の購入を促進するスキルのこと。ホテルで言えば、レストランスタッフがお食事後のデザートを進めることや、フロントスタッフがお部屋の説明時にルームサービスの利用を進めることなどです。
アップセリングスキルとは、顧客が購入する商品やサービスをそのまま販売するのでなく、もうワンランク上のものをおすすめして販促するスキルのこと。ホテルで言えば、客室のアップグレードや、お料理のコースのアップグレードなどのことです。
多くのホテルが繁忙期と閑散期の売上の大幅な変動を、仕方のないこととして受け入れています。しかし、閑散期の売上現象は対策の仕方によって食い止めることが可能です。
ホテルの特性やターゲット層をより深く理解し、その上で新たな施策を打ち出しましょう。そうすることで、閑散期をこれまでと比較にならないほど有効に活用することが可能になります。
WASIMILには、顧客情報管理システム「CRM」があります。CRMを有効活用することで、これまでの利用客の共通点や特徴を正確につかむことが可能となり、閑散期の施策を検討する際にも役立ちます。
WASIMILを導入することで、これまで手作業で顧客データを洗い出していた膨大な作業は驚くほどに簡略化され、時間をさらに有効に使うことができます。WASIMILを活用し、閑散期の集客対策に役立ててみてはいかがでしょう。