新型コロナを理由としたキャンセルが相次ぎ、落ち続ける収益に打ち手がなく途方に暮れてはいないでしょうか。どのホテルも行き詰まるような緊張感を感じながら、今日を、そして明日を乗り越えることだけを考えていることでしょう。
残念ながら、この状況を打破する奇跡的な打ち手はありません。そのため少しでも影響を減らし、Withコロナの時代を生き延びるホテル運営の仕方を考え続ける必要があります。
この記事では、ホテルのレベニューマネジメントにおいて、今できる施策を7つ紹介します。
Withコロナの時代のレベニューマネジメント
先の見えないWithコロナの時代を乗り切るために、今できるレベニューマネジメントの施策を7つ紹介します。
1. 新型コロナの感染拡大防止に努め安全性をアピールする
この苦しい状況をできるだけ早く収束させるために、ホテルとしても感染拡大の防止に努めることが最優先です。政府や都道府県の感染防止ガイドラインに従い、新型コロナを収束に向かわせるために、感染防止策を講じましょう。
ゲストを新型コロナから守ることはもちろん、ホテルスタッフ、そして自分自身の健康にも常に留意する必要があります。ホテルから感染者を出さないことを、現時点でのホテル運営において第一に考えるようにしてください。
そのうえで、ホテルでどのような新型コロナ対策を行っているのかが、サイトにアクセスしたゲストがすぐ分かるようにしておくことが重要です。どのような感染防止対策を行っているのかを、写真も交えて具体的に明記するようにしましょう。
2. 室料は下げずにサービスを付加する
予約が入らないからといってホテルの室料を下げるのは、レベニューマネジメントとしては悪手です。室料を引き下げると、一時的には状況が好転する可能性はありますが、エリア内で価格競争がおこることが考えられます。
そうなった場合、新型コロナが収束したからといって、室料を再び上げることは難しいものです。結果的に中長期的なホテル運営に打撃を与えることになるため、室料の引き下げは避けたほうが無難です。
また室料を下げることは、ホテルのブランドイメージを傷つける可能性もあります。ブランドの価値が下がれば、ゲストがブランドに感じているロイヤリティも下がり、優良顧客を失ってしまうかもしれません。
室料を下げる代わりに、以下のようなサービスを行うとよいでしょう。
・3泊以上で3泊目は半額にする
・素泊まりの室料で、朝食をサービスする
上記のようなサービスは、室料自体を下げることなく、ゲストにはお得感を与えられることがメリットです。
3. 柔軟なキャンセルポリシー運用をする
新型コロナにより、これからなにがどう変わっていくのか誰にも分からず、何もかもが不確かである今、旅行計画は非常に立てにくくなっています。そのような状況下でゲストに予約をしてもらうためには、キャンセルポリシーを柔軟に運用しなければなりません。
Withコロナにおけるキャンセルポリシーの運用例
・前もって支払いを済ませたゲストに対しキャンセル料を設定している場合でも、体調不良が原因であればキャンセル料を免除する
・宿泊予定日にホテルの所在地、またはゲストの居住地において緊急事態宣言が出された場合には、キャンセル料を免除する
上記のような対応をすることを明確にしておくと、ゲストは安心して予約ができます。前日や、最悪当日にキャンセルが発生することも考えられるため痛手になるかもしれません。
「柔軟な対応をしてもらった」とゲストが感じた場合には顧客満足度が高まり、長期的にはよい影響を与えると考えられるでしょう。
4. 少しでも動きのあるエリアに照準を合わせる
新型コロナの影響でインバウンドの宿泊需要が壊滅的な今、国内に目を向ける以外にありません。今どの地域から自社ホテルサイトへのアクセスが多く集まっているのかをGoogle Analyticsなどのアクセス解析ツールで分析を進め、少しでも動きのあるエリアを特定したうえで戦略を立てましょう。
考えられる施策
・アクセス解析の結果に従って、デジタル広告の出稿先を対象エリアに最適化する
・CRMなどを活用し、対象エリアの顧客にニュースレターやメルマガを送るなどのメールマーケティングを行う
5. 販売チャネルを見直す
もし現時点で販売を行っていないチャネルがあるようなら、新らしく販売を開始するなどできるだけ販売チャネルを増やすことは有効です。またこれまで積極的にプランを出していなかったOTAはないでしょうか?あるいはしばらく疎遠になっている旅行社があれば、コンタクトをとってみてはいかがでしょうか。
そしてアフターコロナに備え、この機会にそれぞれの販売チャネルについてデータを詳細に分析しておきましょう。同時にレベニューマネジメントの一環として、予約システムが適切に運用されているかどうかも同時に確認するようにしてください。
料金の種別例
・通常料金
・割引料金(早割など)
・NET料金(旅行社など)
・団体割引
販売チャネル例
・OTA
・リアルエージェント
・自社サイト
・直接予約
予約システムのデータを分析することにより、どのチャネルのどの料金種別の低下が著しいのか、また比較的見込みがあるのはどこなのかを確認し、少しでも見込みがあるチャネルに焦点をあてて優先的に販売活動を行うようにしましょう。
6. 客室以外の収入源も見直す
ホテルの収入源は、客室販売だけではありません。宴会場やレストランも含めたホテル運営をしているところも多いのではないでしょうか。そのような場合には、客室販売以外で収入を増やす方法も、レベニューマネジメントを考えるうえでは有効です。
客室販売以外で収入を増やすアイデア
・レストランでテイクアウトやデリバリーを始められないか?
・宴会やパーティーは難しくても、危機管理対策などでの「会議場」としての需要は見込めないか?
・宿泊したゲストにレストランで食事をしてもらう、お土産を購入してもらうなどのアップセルはできないか?
7. 経費削減対策を徹底して行う
ここまでに挙げた工夫をこらしても、予約や最低限の収益確保が難しいようであれば、少しでも減収を防ぐために、支出を抑えることを徹底しましょう。
まず現時点で見込めるこの先半年ほどの収益をできる限りで予測すると同時に、コスト削減できる部分がないかを精査します。
経費削減対策の例
・新規採用の停止や人員調整による人件費の削減
・レストランやルームサービスなどの営業時間の短縮
アフターコロナに向けてレベニューマネジメントの見直しを
これまでにも世界規模の経済危機は発生しており、そして危機が去ったあとには一気に景気が好転してきました。今回の新型コロナによる災禍がいつまで続くのかまだ先は見えませんが、明けない夜はありません。
Withコロナの時代を乗り越え、アフターコロナの時代を迎えるときまでに、これまで取り組んできたレベニューマネジメントをしっかりと見直しておくことが大切です。経済が回復したときに、どこよりも早くスタートダッシュが切れるように準備を進めておきましょう。
*この記事は、Thibault Catala氏の協力をもとにWASIMILが翻訳・編集を行ったものです。
オリジナル記事:Practical Revenue Management Tactics To Implement In Your Hotel During The Coronavirus Crisis