
中小規模ホテルがSNSで直接予約を増やす方法:ソーシャルメディア活用の主要戦術
プラットフォーム別: ソーシャルメディア活用のポイント
SNSマーケティングと言っても、プラットフォームごとにユーザー層や適したコンテンツ形式が異なります。それぞれの強みを理解し、適切な戦略をとることが成功への近道です。
ここでは主要なSNSプラットフォーム(Instagram, Facebook, TikTok, X/旧Twitter, YouTube)の特徴と活用ポイントを整理します。
- Instagram(インスタグラム): ホテル業界で長年「王道のSNS」とされるビジュアル重視のプラットフォームです。月間アクティブユーザーは20億人にも達し 、特に旅行のアイデア探しや情報収集に人気があります。美しく憧れを掻き立てる旅行写真や動画を発信することでブランド認知を高める効果が期待できます。
ただし、単に綺麗な写真を投稿するだけでは埋もれてしまうため、ストーリーズやリール(短尺動画)といった機能を活用しましょう。リールやストーリーズはフォロワー以外にも拡散されやすく、「閲覧者を予約客に転換する」潜在力があると2024年以降注目されています。実際、InstagramとFacebook上のリール動画は2023年時点で1日あたり2000億回以上再生されており(前年比40%増)、短い動画でも大きなリーチを獲得できることが分かります。
インスタではブランドストーリーを統一した動画制作を行い、ハッシュタグも駆使して投稿すると良いでしょう。また、自社公式ハッシュタグを作って宿泊客に投稿してもらう施策も効果的です。UGCの蓄積により信頼感が高まり、将来の予約検討者に「このホテルに泊まればこんな体験ができる」と具体的にイメージさせることができます。
- Facebook(フェイスブック): 世界で最も利用者が多いSNSで、2023年第三四半期時点で月間アクティブユーザーは30億人を突破しています。日本では若年層の利用は相対的に少ないものの、中高年層や海外ユーザーとの接点として依然無視できません。
Facebookの強みはコミュニティ機能と充実した広告ターゲティングにあります。自社の公式ページを育ててファンとの交流を図るほか、イベント情報や地元ニュースを発信して「地域に根ざしたホテル」という印象づけをするのも良いでしょう。
さらに、Facebook広告では年齢層・興味関心・居住地(渡航先)など細かく絞り込んで配信できるため、「地域×趣味嗜好」にマッチした潜在顧客にリーチ可能です。例えば過去に自社サイトを訪れたものの予約に至らなかったユーザーに対し、Facebookのピクセル機能と広告を使って再訪問を促す(リターゲティング)手法は直販率向上に有効です。
先述のようにページ上に「予約する」ボタンを設置すれば、興味を持ったユーザーを即座に自社エンジンの予約画面へ誘導できます。投稿内容はInstagramと連携しつつ、口コミレビューやメディア掲載記事のシェアなど信頼性を補強する情報も交えると良いでしょう。
- TikTok(ティックトック): 圧倒的な勢いで台頭している新興プラットフォームです。月間ユーザーは12億人以上と推定され 、Z世代(1990年代後半〜2000年代生まれ)が全ユーザーの約60%を占めます。
TikTok最大の特徴は「興味ベースで動画が次々と表示される中毒性の高い体験」です。平均してユーザーは月22.9時間もTikTokを視聴しており、滞在時間の長さは他の追随を許しません。
ホテルにとってTikTokは、エンターテインメント要素を交えながらブランド認知を広げられる場です。「完璧で洗練された動画」よりも舞台裏の様子やスタッフの日常、滞在体験の生々しい一場面など、親近感や意外性のある短編動画が共感を呼びやすい傾向にあります。
実際、旅行者が次の旅の計画にTikTokを使うケースが増えています。TikTok社自身の分析でも、ユーザーは「好奇心を刺激する実用的な情報」や「型破りなストーリーテリング」、「ブランドとユーザーの信頼関係構築」に価値を見出すとされています。
例えば中東で高級リゾートを展開するAddress HotelsではTikTok広告で直接予約のコンバージョンを狙ったキャンペーンを行い成功しています(TikTok for Business事例)。また、トルコのRixos HotelsはTikTok公式アカウントでアメニティや体験シーンの動画を投稿し、コメント欄には「また泊まりたい!」「どうやって予約できますか?」といった反響が寄せられています。
このように、TikTokは次世代旅行者との接点として無視できず、「面白い動画からそのまま予約へ」という流れを創出できるポテンシャルがあります。一方で急速なトレンド変化もあるため、ヒットしたコンテンツはInstagram ReelsやYouTubeショートにも転用しマルチチャネルで資産化すると効果的でしょう。
- X(旧Twitter): 即時性の高い情報発信が持ち味のプラットフォームです。国内ではTwitter時代から根強いユーザー層があり、リアルタイムの旅先報告や口コミも多く見られます。ただし近年はプラットフォームの方針変更や他SNSの台頭もあり、ホテルのマーケティングチャネルとしての優先度は下がり気味です。海外では「ブランドによるTwitter運用が昨年比7%減少し、2024年に優先すると答えた旅行マーケターはわずか3%」との報告もあります。
とはいえ、イベント告知や緊急時の案内、ハッシュタグを使ったキャンペーンには依然有効な面があります。日本のホテルでも、期間限定のプレゼント企画をX上で展開し拡散を狙う例(後述の事例参照)や、施設の中の人のアカウントがユーモアを交えてフォロワーと交流しファン化につなげている例があります。
リソースに限りがある場合は無理にXまで手を広げず、メインのInstagramやTikTokに集中する選択も賢明ですが、特定のターゲット(例:国内の若者やリアルタイム情報が好きな層)に訴求したい場合にはXも補助的に活用すると良いでしょう。
- YouTube(ユーチューブ): 世界第2位の規模を誇るソーシャルプラットフォームで、月間アクティブユーザーは約24.9億人に上ります。動画というリッチコンテンツをじっくり見せられる点で、他SNSとは一線を画します。旅行関連では、ホテル紹介動画や周辺観光ガイド、体験型Vlog(ビデオブログ)などが人気です。ユーザーの68%は特定のトピックについて短尺・長尺・ライブ配信など複数形式の動画をYouTube上で視聴するとの調査もあり、ホテル側も工夫次第で多彩な切り口のコンテンツを提供できます。例えば、客室ツアー動画やシェフによる料理デモ、地元の見どころ紹介などは長めの尺でも視聴者の関心を引けるでしょう。
また最近ではYouTubeショートと呼ばれる1分以内の縦型短尺動画も台頭しており、InstagramやTikTok向けに作成した動画を再利用してYouTubeにも投稿すれば追加の露出機会が得られます。
YouTubeは検索エンジンとしての側面も強く、例えば「〇〇ホテル レビュー」「△△地域 おすすめホテル」といった検索で上位表示されると、そこから直接公式サイト訪問→予約という流れも期待できます。したがって、動画のタイトルや概要欄に自社サイトへのリンクやCTAを設置し、視聴者をスムーズに予約導線へ誘導することが大切です。
YouTubeは制作コストや労力がかかる印象があるかもしれませんが、一度作った良質な動画コンテンツはエバグリーン(長期間価値が持続)な資産になります。時間をかけてでも蓄積しておけば、後述するように他のSNSや自社サイトにも転用でき、結果的に費用対効果の高い集客ツールとなるでしょう。
以上が主要プラットフォームの概要です。それぞれユーザー層や強みが異なるため、「どのSNSに注力すべきか」はホテルの客層やブランディングによって決まります。例えば、若い女性グループ客が多いリゾートホテルであればInstagramとTikTokに重点を置き、一方でビジネス利用が多いシティホテルならYouTubeで施設紹介動画を充実させつつFacebookで企業やイベントとのネットワーク作りをする、といった具合です。
重要なのは、「闇雲に全てのSNSに手を出す」のではなく自社の潜在顧客が活発に使っているチャネルにリソースを集中することです。そうすることで各プラットフォームでのエンゲージメントを最大化し、ひいては直販予約の効率的な増加につなげられます。
参考:
- 6 current social media trends for hoteliers in 2024
- 12 Ideas for Your Hotel's Social Media Marketing Strategy in 2024
- The Ludlow Hotel Social Media Marketing Case Study
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